第1章[12] 乱入
(ニルビスがハナコさん呼びに反応した!)
ソウイチロウは確信した。
やはりニルビスはハナコと関係がある存在だ、と。
「隙あり!」
自分から視線をそらしたのを見逃さずに、ルビーはニルビスに飛び蹴りを繰り出した。
ニルビスは慌ててかわそうとするが間に合わず、ルビーの足底部はニルビスの肩口に叩きつけられた。
「――つぅっ!」
再び間合いに入ったルビーは猛ラッシュを繰り出した。
息をつかせぬ素早い連撃にニルビスは応酬する。
「すごい! はやい!」
目の前で繰り広げられる激しい格闘戦にミツボが興奮する。
居ても立っても居られないという様子であった。
「――私も、やってみたい!」
我慢が出来なくなったミツボは遂にその場から飛び出し、戦闘中のニルビスとルビーに向かって勢いよく走っていく。
「あっ、おいミツボ!」
唐突な行動に、ソウイチロウにはミツボを止める間もなかった。
自分に向かってくるミツボの姿に気付いて、ニルビスとルビーは戦闘を中断した。
「あらら……。これはかわいい乱入者の登場ね」
ルビーは駆け寄ってくるミツボに向かって笑顔を向ける。
「バトルフィールドの中に入っちゃ駄目だよ! 危ないんだから」
ニルビスはミツボを静止しようとミツボに体を向けた。
「あのね、あのね、私も混ぜて!」
ミツボは二人に向かって紅潮した笑顔を見せた。
ニルビスとルビーは顔を見合わせる。
「仕方ないわ。乱入者ちゃんにご退場して貰うまで、一時休戦ね」
そういうと、ルビーはミツボに向かって両手を広げて迎え入れる仕草を取った。
「さあ、いらっしゃい! お姉さんが相手をしてあげるわ。あたしが勝ったら、大人しくバトルフィールドの外で観戦してね」
「よーしっ、行くよーっ!」
ミツボは肩をグルグルと回してから、握り拳を固める。
「んしょっ!」
地面を蹴ったミツボはルビーとの距離を一瞬で詰める。
その速度はルビーの想像を遥かに超えるものだったようで、気付いた時にはミツボはルビーの懐に完全に入り込んでいた。
「――!?」
「てぇーいっ!」
ミツボの強烈な拳による一撃がルビーの胸部に叩きつけられそうになる。
「くうぅっ!?」
だが、ミツボの打撃は大振りな分、その軌道はルビーには予測できるものであった。
ルビーはミツボの拳が自身に触れる直前に腕を取って捻りを加えた。
途端にミツボは、殴りかかった勢いのまま背中を地面に叩きつけられた。
ルビーが反射的に合気道の技をミツボに仕掛けたのだ。
ドズンッっと重い衝突音が交差点の周囲に響き渡る。
ミツボの体はアスファルトに深くめり込んでいた。
その場にいる誰もが、一瞬の出来事に言葉を失っていた。
「し、死ぬかと思った――」
技を仕掛けた側のルビーは冷汗を流しながら呆然と立ち尽くしていた。
「凄い音がしたけど、今の大丈夫!?」
地面に倒れたままのミツボにニルビスが駆け寄る。
ミツボは大の字で仰向けに地面に転がっている。
その表情はキラキラと輝いていた。
「何が起こったの!? 気が付いたらバターンって倒されてた! 今のは何!?」
ミツボには今の一撃でダメージを負った様子は一切無かった。
むしろ、技を受けたこと自体を楽しんでいる風に見えた。
ニルビスの手を借りて立ち上がったミツボは平然としている。
その姿に観衆が沸き立った。
「嬢ちゃん、スゲェぞー!」「いいぞ、もっとやれ!」「今度はその一発、決めてやれ!」
ミツボを応援する歓声に向かってルビーが悲鳴を上げる。
「冗談じゃない! あんな攻撃をまともに喰らったら、タダじゃ済まないわよ!」
「もう一回やって! さっきの、もう一回やって!」
ミツボはさきほどの技を再現させるために、握り拳を作って腰を深く落とす。
「ちょっとタンマ、タンマ!」
ルビーは思わず後ずさり、手でタイムのポーズを作る。
ミツボとルビーのふたりの間に、ニルビスが立ち塞がった。
「アンタ、バトル用の制限プログラムをインストールしてないでしょ! なら、バトルに参加する権利は無いよ!」
「えー!? そんなの必要ないよ」
「必要あるの! それが、この渋谷のルールなんだから!」
ミツボとニルビスがやり合っているところに、ソウイチロウとメイアー・Pが駆けつけた。
「コラ、ミツボ! 勝手な事しちゃ駄目だって!」
ソウイチロウはミツボの肩に手を置く。
「あっ、ソウイチロウ! ねぇ、私もバトルがしたい! 私にせいげんプログラムをインストールして!」
「そ、そんな事を急に言われても……!」
ソウイチロウはPの方を向く。
「……ミツボさんがバトルに参加できるようになるには、幾つかの手続きを経る必要があります。残念ですが、今、この場で出来ることではありません」
「そんなーっ!」
Pの言葉にミツボはがっくりと肩を落とす。
「アンタ……ミューゾンじゃない、人間だね? 人間がなんでこんなトコロにいるの?」
ニルビスはソウイチロウに向かって口を開いた。
どこか少年らしさを感じさせる声色も、やはりハナコと同じものであるとソウイチロウには感じられた。
だが、どこか刺々しい物言いは、ソウイチロウの記憶にあるものとは少し違っている。
「えっ、人間!? ……あら、ホントだわ……」
ルビーはソウイチロウの顔をマジマジと見つめてから驚いた表情を見せる。
「それに、この小さいスプライトは何? こんな個体が存在しているなんて話、私は聞いてない……。どういうこと? メイアー」
Pは手を首の後ろに回しながら、ニルビスに答える。
「申し訳ありません、ニルビスさん。このような事になると思っていなかったものですから……。詳細は明日のボード・ミーティングにて説明させて頂こうと考えておりました」
「単純な話ではなさそうってのは分かってるけど、この後ですぐに教えて欲しい」
「承知いたしました」
Pが頭を下げる。
「……で、この場はどう収拾をつけようか?」
ニルビスが周囲を見渡す。
バトルを楽しみにしていた観衆達はブーイングを始めていた。
「なんだよ、もう終わりかよ!」「嬢ちゃんのバトルをもっと見せやがれ!」「今度は姫様とやり合ってみせてくれよ!」
「ニルビスさんとルビーさんとで、バトルを仕切りなおして頂くのが最良かと……」
「分かった。詳しい話はそのあとで聞かせてもらうわ。ルビーさん、それで良い?」
ニルビスはルビーの方を向いた。
「そうしましょうか、ニルビスちゃん」
「では、我々は城に引き返します。また後ほど……ソウイチロウさん、ミツボさん、行きましょう」
Pはソウイチロウとミツボを連れてそそくさと歩き始めた。
(ニルビス――ハナコさん――)
ソウイチロウはニルビスの事が頭から離れないままでいた。
ソウイチロウは確信した。
やはりニルビスはハナコと関係がある存在だ、と。
「隙あり!」
自分から視線をそらしたのを見逃さずに、ルビーはニルビスに飛び蹴りを繰り出した。
ニルビスは慌ててかわそうとするが間に合わず、ルビーの足底部はニルビスの肩口に叩きつけられた。
「――つぅっ!」
再び間合いに入ったルビーは猛ラッシュを繰り出した。
息をつかせぬ素早い連撃にニルビスは応酬する。
「すごい! はやい!」
目の前で繰り広げられる激しい格闘戦にミツボが興奮する。
居ても立っても居られないという様子であった。
「――私も、やってみたい!」
我慢が出来なくなったミツボは遂にその場から飛び出し、戦闘中のニルビスとルビーに向かって勢いよく走っていく。
「あっ、おいミツボ!」
唐突な行動に、ソウイチロウにはミツボを止める間もなかった。
自分に向かってくるミツボの姿に気付いて、ニルビスとルビーは戦闘を中断した。
「あらら……。これはかわいい乱入者の登場ね」
ルビーは駆け寄ってくるミツボに向かって笑顔を向ける。
「バトルフィールドの中に入っちゃ駄目だよ! 危ないんだから」
ニルビスはミツボを静止しようとミツボに体を向けた。
「あのね、あのね、私も混ぜて!」
ミツボは二人に向かって紅潮した笑顔を見せた。
ニルビスとルビーは顔を見合わせる。
「仕方ないわ。乱入者ちゃんにご退場して貰うまで、一時休戦ね」
そういうと、ルビーはミツボに向かって両手を広げて迎え入れる仕草を取った。
「さあ、いらっしゃい! お姉さんが相手をしてあげるわ。あたしが勝ったら、大人しくバトルフィールドの外で観戦してね」
「よーしっ、行くよーっ!」
ミツボは肩をグルグルと回してから、握り拳を固める。
「んしょっ!」
地面を蹴ったミツボはルビーとの距離を一瞬で詰める。
その速度はルビーの想像を遥かに超えるものだったようで、気付いた時にはミツボはルビーの懐に完全に入り込んでいた。
「――!?」
「てぇーいっ!」
ミツボの強烈な拳による一撃がルビーの胸部に叩きつけられそうになる。
「くうぅっ!?」
だが、ミツボの打撃は大振りな分、その軌道はルビーには予測できるものであった。
ルビーはミツボの拳が自身に触れる直前に腕を取って捻りを加えた。
途端にミツボは、殴りかかった勢いのまま背中を地面に叩きつけられた。
ルビーが反射的に合気道の技をミツボに仕掛けたのだ。
ドズンッっと重い衝突音が交差点の周囲に響き渡る。
ミツボの体はアスファルトに深くめり込んでいた。
その場にいる誰もが、一瞬の出来事に言葉を失っていた。
「し、死ぬかと思った――」
技を仕掛けた側のルビーは冷汗を流しながら呆然と立ち尽くしていた。
「凄い音がしたけど、今の大丈夫!?」
地面に倒れたままのミツボにニルビスが駆け寄る。
ミツボは大の字で仰向けに地面に転がっている。
その表情はキラキラと輝いていた。
「何が起こったの!? 気が付いたらバターンって倒されてた! 今のは何!?」
ミツボには今の一撃でダメージを負った様子は一切無かった。
むしろ、技を受けたこと自体を楽しんでいる風に見えた。
ニルビスの手を借りて立ち上がったミツボは平然としている。
その姿に観衆が沸き立った。
「嬢ちゃん、スゲェぞー!」「いいぞ、もっとやれ!」「今度はその一発、決めてやれ!」
ミツボを応援する歓声に向かってルビーが悲鳴を上げる。
「冗談じゃない! あんな攻撃をまともに喰らったら、タダじゃ済まないわよ!」
「もう一回やって! さっきの、もう一回やって!」
ミツボはさきほどの技を再現させるために、握り拳を作って腰を深く落とす。
「ちょっとタンマ、タンマ!」
ルビーは思わず後ずさり、手でタイムのポーズを作る。
ミツボとルビーのふたりの間に、ニルビスが立ち塞がった。
「アンタ、バトル用の制限プログラムをインストールしてないでしょ! なら、バトルに参加する権利は無いよ!」
「えー!? そんなの必要ないよ」
「必要あるの! それが、この渋谷のルールなんだから!」
ミツボとニルビスがやり合っているところに、ソウイチロウとメイアー・Pが駆けつけた。
「コラ、ミツボ! 勝手な事しちゃ駄目だって!」
ソウイチロウはミツボの肩に手を置く。
「あっ、ソウイチロウ! ねぇ、私もバトルがしたい! 私にせいげんプログラムをインストールして!」
「そ、そんな事を急に言われても……!」
ソウイチロウはPの方を向く。
「……ミツボさんがバトルに参加できるようになるには、幾つかの手続きを経る必要があります。残念ですが、今、この場で出来ることではありません」
「そんなーっ!」
Pの言葉にミツボはがっくりと肩を落とす。
「アンタ……ミューゾンじゃない、人間だね? 人間がなんでこんなトコロにいるの?」
ニルビスはソウイチロウに向かって口を開いた。
どこか少年らしさを感じさせる声色も、やはりハナコと同じものであるとソウイチロウには感じられた。
だが、どこか刺々しい物言いは、ソウイチロウの記憶にあるものとは少し違っている。
「えっ、人間!? ……あら、ホントだわ……」
ルビーはソウイチロウの顔をマジマジと見つめてから驚いた表情を見せる。
「それに、この小さいスプライトは何? こんな個体が存在しているなんて話、私は聞いてない……。どういうこと? メイアー」
Pは手を首の後ろに回しながら、ニルビスに答える。
「申し訳ありません、ニルビスさん。このような事になると思っていなかったものですから……。詳細は明日のボード・ミーティングにて説明させて頂こうと考えておりました」
「単純な話ではなさそうってのは分かってるけど、この後ですぐに教えて欲しい」
「承知いたしました」
Pが頭を下げる。
「……で、この場はどう収拾をつけようか?」
ニルビスが周囲を見渡す。
バトルを楽しみにしていた観衆達はブーイングを始めていた。
「なんだよ、もう終わりかよ!」「嬢ちゃんのバトルをもっと見せやがれ!」「今度は姫様とやり合ってみせてくれよ!」
「ニルビスさんとルビーさんとで、バトルを仕切りなおして頂くのが最良かと……」
「分かった。詳しい話はそのあとで聞かせてもらうわ。ルビーさん、それで良い?」
ニルビスはルビーの方を向いた。
「そうしましょうか、ニルビスちゃん」
「では、我々は城に引き返します。また後ほど……ソウイチロウさん、ミツボさん、行きましょう」
Pはソウイチロウとミツボを連れてそそくさと歩き始めた。
(ニルビス――ハナコさん――)
ソウイチロウはニルビスの事が頭から離れないままでいた。