第1章[8] スプライト
トゥインクルは足元に置かれたバッグから、USBメモリに似たドングルを取り出した。
ドングルの中央には米粒程度の小さな緑色の魔法石が輝きを放っている。
(以前、一関博士に見せられたものに似ている……)
「このユニットを、アンタのノートパソコンに刺して。アンタにプログラミング・センスがあるなら、アプリケーションが自動で起動するから」
トゥインクルはソウイチロウにドングルを差し出した。
ソウイチロウはドングルを受け取ると、ビジネスバッグからノートパソコンを取り出して、受け取ったドングルを接続した。
ノートパソコン上では、見たことのないアプリケーションが自動的に起動した。
スプライトのプログラムを編集するための開発アプリケーションである。
「アプリケーションが起動したよ。この画面構成、Eclipseに似てるな」
プログラミング慣れしたソウイチロウには、なんとなくの感覚で操作できそうだった。
「ソッチは問題なさそうだね。今度はミツボの方……っと」
トゥインクルはバッグからワイヤレスのカナル型イヤホンを取り出す。
イヤホンにもドングルと同様に、米粒大の緑色の魔法石が埋め込まれていた。
「コレを耳に差し込んで」
トゥインクルからイヤホンを受け取ったミツボは、自分の耳にイヤホンを差し込んだ。
「これでいい?」
「うん、オッケー。これでソッチのノートパソコンでミツボを認識できるようになっているハズだよ。デバイス一覧を表示させてみて」
ソウイチロウはトゥインクルの指示に従い、開発アプリケーション内の『デバイス一覧』タブを選択した。
タブ内の一覧の中に、『Mitsubo』という名前の項目がある。
ソウイチロウはその項目をダブルクリックした。
「うん、これでソッチのノートパソコンとミツボとのペアリングも完了したよ。パソコンの画面にアクションの一覧が表示されていない?」
「お、何かズラズラといっぱい表示された。コレがミツボの中にあるプログラムの一覧って訳か」
「そういうコト。試しに新規でアクションを作成してみなよ」
「アクションの新規作成……? ちょっと待って」
ソウイチロウはディスプレイ内の画面項目をひとつずつ確認していく。
「あー、このメニュー項目か。クリック……と」
「新規追加したアクションには、デフォルトでサンプル・プログラムが書かれてるハズなんだけど。どう、コードを読んで理解できる?」
「ちょっと待って……」
ソウイチロウは画面に映し出されたソースコードを一行ずつ読み進めた。
(これもJavaのプログラムだ……。コメントもやっぱり日本語だ。ニルビスのコックピットにあったシステムと同じで、利用者に合わせて自動的に開発言語を翻訳して表示する機能が備わっているらしい……)
特に苦労することもなく、ソウイチロウはサンプルプログラムを読み解くことが出来た。
「1秒に1回の間隔で、両方の手のひらを叩き合わせる動作になってる。合ってる?」
「正解。じゃあ、そのプログラムに『ゆっくり拍手』って名前を付けて保存した後、ミツボにインストールさせて」
「えーっと、名前を付けて保存してと……インストールは、この項目をドラッグアンドドロップすればいいのかな?」
ソウイチロウがノートパソコン上で操作を行うと、
「頭の中に新しいプログラムが流れて来たよ!」
ミツボが声をあげる。
「オッケー。じゃあ、今インストールしたプログラムを動かしてみるよ。ミツボ、『ゆっくり拍手』をしてみて!」
トゥインクルが指示を与えると、ミツボはパチ、パチ、パチ……と1秒間隔で手を叩き始めた。
「わわっ、体が勝手に動く!」
「はい、スプライトのプログラミングってのは、こんな感じ。ミツボ、ストップ!」
トゥインクルの指示に従い、ミツボは拍手を止めた。
「今度は、アタシから簡単な課題を出すよ。拍手を1秒に2回の間隔で行うようにして、『はやく拍手』という命令で実行するプログラムを作ってみて」
「了解。まずは『はやく拍手』という名前で、表示中のプログラムを保存して……と」
トゥインクルに課題を与えられたソウイチロウは、早速プログラムの作成に取り掛かった。
「この定数が手を広げる際のスピードだから、これを2倍の値にして……同じ要領で、手を合わせる際のスピードを定義した定数の値も2倍にして、と」
ソウイチロウは自分の操作をひとつひとつ声に出した。
その内容にトゥインクルが頷く。
「後は、プログラムを上書き保存して、ミツボにインストール……と」
「また新しいプログラムが流れてきた!」
「準備出来たみたいだね。それじゃ始めるよ。ミツボ、『はやく拍手』!」
トゥインクルが指示を与えると、ミツボはパチパチパチ……とさきほどよりも早い間隔で手を叩き始めた。
「オッケー、オッケー。あたしの課題は無事に合格だね。ミツボ、ストップ!」
トゥインクルはソウイチロウに向かって親指を立てる。
「まぁ、これぐらいの課題なら楽勝、楽勝」
ソウイチロウもトゥインクルに親指を立ててみせた。
「その程度、プログラミング・センスを有する者なら出来て当然だ」
Uのボソッとした呟きに、ソウイチロウはムっと顔をこわばらせる。
「珍しく口を開いたら、この人は……。まあ、気にしないでおいて。後の操作はアタシがゴチャゴチャと説明しなくても、なんとなくで理解できるでしょ?」
「うん、大筋は理解できたと思う」
「こうやって、スプライトに命令を与えることができる人のことを、私たちは大雑把にプログラマーって呼んでいるわ。アンタには簡単だったかもしれないけれど、これが出来るミューゾンは数が限られていてね、貴重なのよ」
トゥインクルは喋りながら、ソウイチロウとミツボからプログラミング・ユニットを回収する。
「そろそろ渋谷城に着く。降りる準備をしておけ」
Uが口を開いた。
「渋谷城? 渋谷にお城なんてあったっけ?」
「俗称だよ、俗称。本来の名前は、なんだっけ……。 ホラ、あの高い建物」
トゥインクルが指さす方向には、渋谷ヒカリエが高くそびえ立っていた。
ドングルの中央には米粒程度の小さな緑色の魔法石が輝きを放っている。
(以前、一関博士に見せられたものに似ている……)
「このユニットを、アンタのノートパソコンに刺して。アンタにプログラミング・センスがあるなら、アプリケーションが自動で起動するから」
トゥインクルはソウイチロウにドングルを差し出した。
ソウイチロウはドングルを受け取ると、ビジネスバッグからノートパソコンを取り出して、受け取ったドングルを接続した。
ノートパソコン上では、見たことのないアプリケーションが自動的に起動した。
スプライトのプログラムを編集するための開発アプリケーションである。
「アプリケーションが起動したよ。この画面構成、Eclipseに似てるな」
プログラミング慣れしたソウイチロウには、なんとなくの感覚で操作できそうだった。
「ソッチは問題なさそうだね。今度はミツボの方……っと」
トゥインクルはバッグからワイヤレスのカナル型イヤホンを取り出す。
イヤホンにもドングルと同様に、米粒大の緑色の魔法石が埋め込まれていた。
「コレを耳に差し込んで」
トゥインクルからイヤホンを受け取ったミツボは、自分の耳にイヤホンを差し込んだ。
「これでいい?」
「うん、オッケー。これでソッチのノートパソコンでミツボを認識できるようになっているハズだよ。デバイス一覧を表示させてみて」
ソウイチロウはトゥインクルの指示に従い、開発アプリケーション内の『デバイス一覧』タブを選択した。
タブ内の一覧の中に、『Mitsubo』という名前の項目がある。
ソウイチロウはその項目をダブルクリックした。
「うん、これでソッチのノートパソコンとミツボとのペアリングも完了したよ。パソコンの画面にアクションの一覧が表示されていない?」
「お、何かズラズラといっぱい表示された。コレがミツボの中にあるプログラムの一覧って訳か」
「そういうコト。試しに新規でアクションを作成してみなよ」
「アクションの新規作成……? ちょっと待って」
ソウイチロウはディスプレイ内の画面項目をひとつずつ確認していく。
「あー、このメニュー項目か。クリック……と」
「新規追加したアクションには、デフォルトでサンプル・プログラムが書かれてるハズなんだけど。どう、コードを読んで理解できる?」
「ちょっと待って……」
ソウイチロウは画面に映し出されたソースコードを一行ずつ読み進めた。
(これもJavaのプログラムだ……。コメントもやっぱり日本語だ。ニルビスのコックピットにあったシステムと同じで、利用者に合わせて自動的に開発言語を翻訳して表示する機能が備わっているらしい……)
特に苦労することもなく、ソウイチロウはサンプルプログラムを読み解くことが出来た。
「1秒に1回の間隔で、両方の手のひらを叩き合わせる動作になってる。合ってる?」
「正解。じゃあ、そのプログラムに『ゆっくり拍手』って名前を付けて保存した後、ミツボにインストールさせて」
「えーっと、名前を付けて保存してと……インストールは、この項目をドラッグアンドドロップすればいいのかな?」
ソウイチロウがノートパソコン上で操作を行うと、
「頭の中に新しいプログラムが流れて来たよ!」
ミツボが声をあげる。
「オッケー。じゃあ、今インストールしたプログラムを動かしてみるよ。ミツボ、『ゆっくり拍手』をしてみて!」
トゥインクルが指示を与えると、ミツボはパチ、パチ、パチ……と1秒間隔で手を叩き始めた。
「わわっ、体が勝手に動く!」
「はい、スプライトのプログラミングってのは、こんな感じ。ミツボ、ストップ!」
トゥインクルの指示に従い、ミツボは拍手を止めた。
「今度は、アタシから簡単な課題を出すよ。拍手を1秒に2回の間隔で行うようにして、『はやく拍手』という命令で実行するプログラムを作ってみて」
「了解。まずは『はやく拍手』という名前で、表示中のプログラムを保存して……と」
トゥインクルに課題を与えられたソウイチロウは、早速プログラムの作成に取り掛かった。
「この定数が手を広げる際のスピードだから、これを2倍の値にして……同じ要領で、手を合わせる際のスピードを定義した定数の値も2倍にして、と」
ソウイチロウは自分の操作をひとつひとつ声に出した。
その内容にトゥインクルが頷く。
「後は、プログラムを上書き保存して、ミツボにインストール……と」
「また新しいプログラムが流れてきた!」
「準備出来たみたいだね。それじゃ始めるよ。ミツボ、『はやく拍手』!」
トゥインクルが指示を与えると、ミツボはパチパチパチ……とさきほどよりも早い間隔で手を叩き始めた。
「オッケー、オッケー。あたしの課題は無事に合格だね。ミツボ、ストップ!」
トゥインクルはソウイチロウに向かって親指を立てる。
「まぁ、これぐらいの課題なら楽勝、楽勝」
ソウイチロウもトゥインクルに親指を立ててみせた。
「その程度、プログラミング・センスを有する者なら出来て当然だ」
Uのボソッとした呟きに、ソウイチロウはムっと顔をこわばらせる。
「珍しく口を開いたら、この人は……。まあ、気にしないでおいて。後の操作はアタシがゴチャゴチャと説明しなくても、なんとなくで理解できるでしょ?」
「うん、大筋は理解できたと思う」
「こうやって、スプライトに命令を与えることができる人のことを、私たちは大雑把にプログラマーって呼んでいるわ。アンタには簡単だったかもしれないけれど、これが出来るミューゾンは数が限られていてね、貴重なのよ」
トゥインクルは喋りながら、ソウイチロウとミツボからプログラミング・ユニットを回収する。
「そろそろ渋谷城に着く。降りる準備をしておけ」
Uが口を開いた。
「渋谷城? 渋谷にお城なんてあったっけ?」
「俗称だよ、俗称。本来の名前は、なんだっけ……。 ホラ、あの高い建物」
トゥインクルが指さす方向には、渋谷ヒカリエが高くそびえ立っていた。